2017年4月4日火曜日

世界巡回展「フェルメールと風俗画の巨匠たち」

Johannes Vermeer, The Milkmaid, ca. 1657-1658. Oil on canvas. 45.5 x 41 cm. Amsterdam,
Rijksmuseum © Amsterdam, The Rijksmuseum

2017年でもっとも話題を呼ぶであろう世界巡回展「フェルメールと風俗画の巨匠たち」がパリのルーブル美術館で始まった。この展覧会では《牛乳を注ぐ女》(fig.1)《天秤を持つ女》《信仰の寓意》をはじめ、現存するフェルメール作品のうち約三分の一にあたる12作品が展示される。フェルメール作品を含む世界有数のオランダ風俗画コレクションを所蔵するルーブル美術館、アイルランド国立絵画館、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの3館によって企画され、それぞれの美術館で順次開催される。

17世紀オランダ、作品鑑賞の愉しみ方
17世紀半ば、オランダは黄金時代とよばれる経済的にも文化的にも成熟した時代を迎えた。裕福なオランダ市民たちは絵画を購入して自宅に飾ったり、友人や美術愛好家が集まって作品を比較してそれぞれの画家の特徴や共通する主題や構図、他の画家から受けた影響などについて語り合ったりして愉しんでいた。フェルメールの作品もそのように愉しまれていた作品のひとつであった。


オランダ風俗画のなかのフェルメール
展覧会「フェルメールと風俗画の巨匠たち」ではフェルメールと同時代の画家たちを同列に並べてオランダ風俗画の文脈の中で改めてフェルメールを捉えなおす試みがなされている。フェルメールは確かに素晴らしい作品を残した画家であるが、実際には宗教画や戦争画などの偉大で伝統的なテーマから脱し、運河沿いの裕福な商人の日常生活などを描いた多くのオランダ人画家のうちのひとりであった。展覧会場では、17世紀の美術愛好家がしていたように、フェルメールと同時代のライバルたちが相互に与えた影響を観て取れる。

フェルメールの特異性
フェルメールと同時代の画家の作品を丁寧に観ていくと、彼の作品の特異性が明らかになる。フェルメールが用いた色彩はほかの画家たちよりも光をはらみ、清新な雰囲気を作り出している。その色彩によって、フェルメールはほかの画家と一線を画しているのだ。

フェルメール出品リスト(制作年順)
  1. 《牛乳を注ぐ女》1657-1658年頃、アムステルダム国立美術館
  2. 《リュートを調弦する女》1662-1664年頃、メトロポリタン美術館
  3. 《真珠の首飾りの女》1663-1664年、ベルリン絵画館
  4. 《天秤を持つ女》1664年頃、ワシントン・ナショナル・ギャラリー
  5. 《手紙を書く女》1665年頃、ワシントン・ナショナル・ギャラリー
  6. 《天文学者》1668年、ルーブル美術館
  7. 《地理学者》1669年、シュテーデル美術館、フランクフルト
  8. 《レースを編む女》1669-1670年頃、ルーブル美術館
  9. 《手紙を書く夫人と召使》1670年頃、アイルランド国立絵画館
  10. 《信仰の寓意》1670-1672年頃、メトロポリタン美術館
  11. 《ヴァージナルの前に座る若い女》1670-1672年頃、ライデン・コレクション
  12. 《ヴァージナルの前に座る女》1671-1674年頃、ロンドン・ナショナル・ギャラリー


「フェルメールと風俗画の巨匠たち」
  - 2017年2月20~2017年5月22日 ルーブル美術館(※事前予約が必要です)
  - 2017年6月17日~2017年9月17日 アイルランド国立絵画館
  - 2017年10月22日~2018年1月21日 ワシントン・ナショナル・ギャラリー
ルーブル美術館では「フェルメールと風俗画の巨匠たち」展とともに、「レンブラントの時代―ライデン・コレクション」展と「日常を描く―黄金時代のオランダ」展が同時開催されている。

Musée du Louvre
75058 Paris
France
http://www.louvre.fr/jp
開館時間:
月・木・土・日曜日 9:00-18:00
水・金曜日 9:00-21:45(夜間開館)
休館日:
毎週火曜日、1月1日、5月1日、12月25日